射出成形やその加飾とは、プラスチックなどの合成樹脂の加工方法のひとつです。
この記事では射出成形の加飾技術の種類や、失敗例について詳しく解説します。各手法の特徴・メリット・製品に与える影響などを紹介します。さまざまな加飾技術の活用により、射出成形製品がより魅力的で個性豊かなものとして市場で存在感を発揮できることに焦点を当てた記事になっています。
射出成形製品の加飾とは?
射出成形製品の加飾とは何でしょうか。ここでは射出成形製品やその加飾について解説します。射出成形とは、プラスチックや熱可塑性ポリマーなどを溶かして型に射出し、製品を形成する製造プロセスです。
射出成形製品は効率的な製造方法のため、さまざまな製品が生産されています。しかし、射出成形製品にはデザインや機能の面で個性を付ける必要があります。そのため、多くの射出成形製品が加飾技術を施されています。
次に加飾とは、射出成形という製造プロセスで作成された製品に対して、さらなる装飾や加工を施すことを指します。加飾技術は多様であり、塗装・印刷・デコレーションフィルム・ホットスタンピング・レーザーエッチング・エンボス加工・シール貼りなどが一般的な手法として利用されています。
これらの加飾技術によって射出成形製品に個性を持たせたり、ブランドのアイデンティティを強調したり、市場競争力を高めたりすることが可能となります。
加飾の種類
射出成形製品の加飾方法にはさまざまな種類があります。以下では、射出成形製品の4つの加飾方法をそれぞれ紹介します。
塗装(UV塗装)
射出成形の加飾のひとつに塗装があります。製品に色を付けたり、特定の仕上げを施したりするために塗料を塗布します。これにより、製品に多彩な色や質感を与えられます。塗装による加工は豊富な質感が演出できることが特徴です。ツヤ・マット・メタリック・グラデーションなど、製品のイメージに合わせて幅広いデザインが施せます。UV塗装の特徴としては、光沢感に優れ、塗装表面が硬くキズや汚れにも強く耐熱・耐湿・耐衝撃性にも優れています。
シルク印刷
射出成形の加飾のひとつには、シルク印刷もあります。シルク印刷は、メッシュ状の穴が開いた特殊な板を使用します。板に空いた穴にヘラでインクを伸ばし入れて加飾を行います。シルク印刷の特徴は、凹凸のある印刷ができることです。インクを厚塗りできるため、触っても楽しめる加飾ができます。
またシルク印刷は、製品にロゴや文字などの印刷をすることも可能です。細かいデザインや文字を再現することができるため、納得のいくまでデザインをカスタムできます。
ホットスタンプ
射出成形の加飾には、ホットスタンプもあります。ホットスタンプとは転写するデザインに熱を加えることにより、金属箔や特殊な素材を製品の表面に貼り付ける技術です。ホットスタンプは箔・金属光沢・ホログラムなどの素材の加飾に利用できます。高級感や装飾性を高める効果があるため、そのような用途のときの加飾として行うのがおすすめです。
パッド印刷
射出成形の加飾のひとつには、パッド印刷も挙げられます。パッド印刷とは、射出成形製品の平坦な部分や曲面に特殊なシリコンパッドを使ってインクを転写する技術です。
パッド印刷の特徴は、小さな部品や複雑な形状にも対応できるため、さまざまな製品のロゴやデザインを印刷するのに適していることです。曲面に印刷できるメリットが大きいため、印刷が難しい場所にも簡単にブランドロゴやワンポイントのデザインを加飾できます。
加飾を施す際に起こりうる失敗例
射出成形製品に加飾を施す場合には、成功することもあれば失敗することもあります。以下では、射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例を主に8つ紹介します。
剥離
加飾を施す際に起こりうる失敗例としてはまず、剥離があります。剥離とは、加飾した塗装やフィルムが製品の表面から剥がれてしまう現象です。原因としては、製品表面に汚れや油分がついていたり、製品に合わない塗料や接着剤を使用していたり、加飾前の表面処理に不備があったりすることなどが挙げられます。
白化・色ムラ
射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例としては、白化や色ムラも挙げられます。白化・色ムラは塗装やフィルムの加飾が不均一であり、白っぽく見えたり色の濃淡が出たりする現象です。対策としては、均一な塗り方をする・フィルムの厚みを確保する・適切な乾燥時間を確保することなどが重要です。
割れ・ハジケ
割れやハジケも、射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例のひとつです。割れやハジケは、加飾後の製品にクラックや割れが生じたり、フィルムの表面が割れたりする現象です。原因としては、成形時の過度な内部応力・フィルムの強度不足・冷却不足・不適切な成形条件などが挙げられます。
ピンホール・ブツ
ピンホールやブツも、射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例です。ピンホール・ブツは、塗装やフィルムの表面に小さな穴や気泡ができる現象です。この現象が起こる原因としては、不適切な塗料の使用や混合・塗布時の塗料の乾燥不足・フィルム貼り付け時の気泡の排出不足などが挙げられます。
塗装の垂れ
塗装の垂れも、射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例として挙げられます。塗装の垂れは、製品に塗装を施す際に塗料が過剰に塗布されることで、重力により垂れてしまいます。塗装の垂れは製品の外観を悪化させ、仕上がりを不均一にさせる可能性があります。
乾燥硬化不足
射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例には、乾燥硬化不足もあります。塗装やコーティングを施した後に十分な時間をかけて乾燥・硬化させないと、塗装が表面にくっついたり、不均一に乾燥してしまったりすることがあります。また乾燥硬化不足が起こると、製品が汚れたり、塗装が剥がれたりする恐れがあります。
隠ぺい力不足
隠ぺい力不足も、射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例のひとつです。加飾の際に隠ぺい力不足が起こると、製品表面に不均一な色や柄が残ってしまうことがあります。もともとの製品の色や模様が透けて見えたり、完全に隠れなかったりする場合があります。
ヒゲ
射出成形製品に加飾を施す際に起こりうる失敗例には、ヒゲもあります。ヒゲとは、射出成形時にプラスチック材料が型(モールド)の隙間やクリアランスから漏れ出してしまい、細長い突起(ヒゲ)が製品表面に形成されてしまうことです。これは品質問題となり、製品の見た目や機能を損なうことがあります。
射出成形の加飾の種類や失敗例を知ろう!
この記事では射出成形の加飾技術の種類や、失敗例について詳しく解説しました。射出成形製品の加飾方法のうち熱を加えるものは、ホットスタンプなどがあります。それ以外のものは、塗装・シルク印刷・パッド印刷などがあります。
また加飾を施す際に起こりうる失敗例としては、剥離・白化や色ムラ・割れやハジケ・ピンホールやブツ・塗装の垂れ・乾燥硬化不足・隠ぺい力不足・ヒゲなどがあります。このような失敗が起こらないようにするためには、加飾する部分の汚れを落としたり、乾燥する時間をきちんと取ったり、ムラなく塗料を塗ることが大切です。
まとめ
加飾は、プラスチックの優れた機能を活かしながら、見た目や質感を変化させる方法です。
加飾技術には多くのバリエーションがあり、プラスチック製品の用途や目的などに合わせて適切な方法を選ぶ必要があります。
開発段階より当社にご相談いただければ最適な加飾方法の提案だけでなく、金型製作からワンストップのサービスを提供いたします。